「あのフリーキック、どうやったら蹴れるんだろう?」 「カーブキックと無回転キック、何が違うの?」
サッカーをプレイする人なら誰もが一度は考えたことがある疑問ではないでしょうか? これまで、インステップキック、カーブキック、無回転キックなど、様々なキック技術はそれぞれ独立した「特別なワザ」として教えられてきました。しかし、もし、これらのキックに共通する「コツ」が科学的に解明されたとしたら…?
今回は、そんなサッカー界の常識を覆すかもしれない、あの三苫選手がいた筑波大学の画期的な研究論文をご紹介します!
参照する論文紹介
- タイトル: 無回転キックは意外と簡単? 〜サッカーのキック技術のコツを科学的に解明〜
- 著者/発表年: 筑波大学 体育系 中山雅雄 教授ら / 2022年9月5日(報道発表日)
- URL/DOI: https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20220906112000.pdf
- 論文の要点(3点):
- この研究が解決しようとしている課題は何か?: これまで個別の技術として扱われてきたインステップキック、カーブキック、無回転キックといった多様なキック技術の「コツ」が把握しにくく、習得に膨大な時間や試行錯誤を要するという課題。
- どのような方法で検証したのか?(技術的なポイント): 光学式3次元モーションキャプチャシステムとバーチャルモデリング技術を連携させ、インステップキック、カーブキック、無回転キックを統合して、バイオメカニクス的、コーチング学的に分析。
- 結果として何が明らかになったのか?: 水平面における足部のインパクト面方向と、そのスイング方向がなす迎え角(含む偏角)が大きなキックほど、ボールの横回転が増大する傾向が見られ、迎え角の大きさによってカーブキック(斜めインパクト)と無回転キック(フラットインパクト)が、連続的に蹴り分けられていることが示唆された。
この論文、すごさを3行で言うと
- これまでバラバラだったキック技術に、共通の「コツ」があることを発見!
- 足の「ボールに当たる角度」と「スイングの方向」が、キックの種類を決めるカギ!
- この発見で、カーブキックの延長線上に無回転キックがあることが分かり、多様なキックの習得がもっと簡単になるかも!
解説:研究の背景と目的
サッカーにおいて、フリーキックやシュートの場面で、インステップキック(ストレートキック)、カーブキック、無回転キック(ナックルキック)といった多様なキック技術は、試合を左右する極めて重要な要素です。しかし、これらのキックはこれまで個別の技術として指導されてきたため、選手がそれぞれの「コツ」を掴むまでに膨大な時間と試行錯誤が必要でした。中には、どれだけ練習しても習得できない技術もあり、多くの選手が悩みを抱えていました。
そこで、筑波大学の中山雅雄教授らの研究グループは、これらのキック技術を統一的に理解するための科学的なアプローチを試みました。彼らの目的は、光学式3次元モーションキャプチャシステムとバーチャルモデリング技術を駆使して、インステップキック、カーブキック、無回転キックのバイオメカニクス的、コーチング学的な分析を行い、それぞれのキック技術の類似点や相違点から、共通の「キーファクター(コツ)」を明らかにすることでした。
解説:ここがスゴい!論文のポイント
この研究の最も革新的な点は、これまで別物とされてきたキック技術を、**「迎え角(むかえかく)」**という一つの指標で統一的に説明できることを示した点です。

具体的には、足がボールに当たる瞬間の「インパクト面の方向」と「スイングの方向」が作る「迎え角」が、ボールの回転に大きく影響することが明らかになりました。
- 迎え角が大きいキック:ボールの横回転が増大する傾向があり、これがカーブキックの原理となります。まるで、ボールを斜めに「なでる」ように蹴るイメージです。
- 迎え角が小さいキック(フラットなインパクト):ボールの横回転が少なくなり、これが無回転キックの原理となります。ボールを「真っ直ぐに押し出す」ようなイメージです。
この発見は、まるで「キックのレシピ」を見つけたようなものです。これまで個別の材料だと思っていたものが、実は同じ「調味料」の量を変えるだけで作れる料理だった、というような驚きです。
解説:明らかになったことと今後の可能性
この研究によって、水平面における足部のインパクト面方向と、そのスイング方向がなす迎え角(含む偏角)が大きなキックほど、ボールの横回転が増大する傾向が見られることが示唆されました。そして、迎え角の大きさによってカーブキックと無回転キックが、連続的に蹴り分けられているという驚くべき事実が明らかになったのです。
これはつまり、カーブキックの延長線上に無回転キックがある、という新しい視点を提供してくれます。この技術が実用化されたら、サッカーの現場は大きく変わるでしょう。
- 指導現場の変革: コーチは、選手に個別のキック技術を教えるのではなく、「迎え角」という共通の概念を使って、より効率的に多様なキックを指導できるようになります。例えば、カーブキックが蹴れる選手には、「もう少しフラットに当ててみて」とアドバイスするだけで、無回転キックの習得に繋がるかもしれません。
- 選手の習得効率向上: 選手は、これまで苦手だったキックも、共通のコツを理解することで、より短期間で習得できるようになるでしょう。自分のキックを客観的に分析し、具体的な改善点を見つける手助けにもなります。
- 新しいトレーニング方法の開発: 迎え角を意識したドリルや、それを可視化するデバイスなどが開発されれば、より科学的で効果的なトレーニングが可能になります。
未来のサッカーフィールドでは、選手たちがまるで方程式を解くように、狙った場所に、狙った回転のボールを蹴り分ける姿が見られるかもしれませんね!
考察:現場で使う上での課題は?
この画期的な研究成果を実際のサッカーチームで導入する際には、いくつかの現実的な課題も考慮する必要があります。
- コストと設備: 光学式3次元モーションキャプチャシステムは高価であり、導入には専門的な知識と広いスペースが必要です。全てのチームがすぐに導入できるわけではありません。将来的には、より手軽で安価なデバイス(例えば、スマートフォンのカメラとAI解析を組み合わせたシステムなど)の開発が望まれます。
- 運用とデータ解析: 収集されたモーションデータを解析し、選手一人ひとりにフィードバックするためには、バイオメカニクスの専門知識を持つスタッフや、データサイエンティストの存在が不可欠です。小規模なチームでは、こうした人材の確保が難しい場合があります。
- 指導者の理解と導入: 新しい科学的知見を現場の指導者が理解し、従来の指導法にどのように組み込んでいくかという課題もあります。理論だけでなく、実践的なワークショップや研修を通じて、指導者への普及啓発が必要です。
- 倫理的な側面: 選手の身体データを詳細に取得・分析する際には、プライバシー保護やデータの適切な管理といった倫理的な配慮も重要になります。
これらの課題をクリアしていくことで、この素晴らしい研究成果が、より多くのサッカー選手やチームの成長に貢献できるようになるでしょう。
まとめ
筑波大学の研究は、これまで感覚的に捉えられていたサッカーのキック技術に、科学の光を当ててくれました。足の「迎え角」という共通のコツを発見したことで、多様なキックの習得がより体系的かつ効率的になる可能性を示しています。
この研究は、サッカーの指導法やトレーニング方法に大きな変革をもたらすかもしれません。将来、誰もが憧れのフリーキックを蹴れるようになる日が来るかもしれませんね! 科学の進歩が、私たちのスポーツをさらに面白く、奥深くしてくれることに、これからも大いに期待しましょう!
【免責事項】 本記事は、公開された研究論文に基づき、その内容を一般の読者向けに分かりやすく解説することを目的としています。医療行為や診断、治療に関するアドバイスを提供するものではありません。特定の症状や疾患については、必ず専門の医療機関にご相談ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。


